アフガニスタン 苛酷な戦争の20年
タハミーナ・ファリャル(RAWA)は語る



(Z magazine 2002年1月号より)
インタビューアー:ソナリ・カルハトカール

カルハトカール: アフガニスタンは苛酷な戦争の20年間を経てきました。
ソ連の侵攻
に始まり、ソ連が樹立した傀儡政権、ついで米国の後押しによってそれを倒したムジャヒディーン、苛酷な内乱、タリバンによる支配。そして今は米国による空爆。アフガニスタンにとって最悪の時代はいつでしたか、それはなぜでしょうか。

ファリャル: まず明らかにしなければならないのは、それらいくつかの時期が互いに関連しているということです。ソ連が侵攻してこなければ、米国の後押しする原理主義者や今のタリバンによる支配はなかったでしょう。アフガニスタンの悲劇の始まりはソ連による侵攻でしたが、すべてがいっそう悪くなった、特に女性にとって悪くなったのは、1992年に原理主義者が支配するようになってからです。8つの党が互いに争い、女性はその主な、そしてたやすい標的となったのです。

カルハトカール: それが今、北部同盟と呼ばれているグループですね。

ファリャル: 原理主義者の全てが北部同盟になったのではありません。一部です。たとえば、グルブディン・ヘクマティアルの率いるアフガニスタン・イスラム党は北部同盟に入っていません。ヘクマティアルは強硬な北部同盟反対派です。1992年から1996年にかけて戦って、何百という罪もない人達を殺した連中の代表的な一人が、ヘクティアルです。

カルハトカール: かれは強硬な反米主義者でもありますね。

ファリャル: そうです。彼は今はタリバンを支持していて、同盟を結ぼうとしていますから。でも、冷戦の時期、彼は米国に大事にされていて、軍事的、財政的に一番米国の援助を多く受けていたのです。

カルハトカール: 女性の権利、人権については、彼はどうですか。

ファリャル: 人権に関しては最悪の記録をもつ人です。それは1992年にほかのグループと一緒に政権についたときばかりではありません。パキタスン北部のペシャワールでもそうでした。彼はそこを根拠地にしていましたが、そこではたくさんの犯罪と残虐行為が行われました。彼はペシャワールで、何百とまではいかないにせよ、何十人かの知識人を殺しました。その中の一人が私たちのRAWAの創立者、ミーナです。

カルハトカール: RAWAは、人権に関しては北部同盟はタリバンと選ぶところがないと言っていますが、米国はアフガンで戦争を遂行するために北部同盟を支援していますね。アフガニスタンの人々は北部同盟が90年代のときのようにアフガンを支配することを恐れているのでしょうね。

ファリャル: アフガニスタンの人達は、北部同盟がアフガニンスタンで何らかの正式の政府の一員になることを恐れています。1992年から1996年の時期は、アフガン史上でいちばん暗黒の時代でした。人々は、病院も学校も博物館も含めてカブールの70〜80%が破壊されたあの時代のことを忘れはしないでしょう。あの時期は、たくさんのレイプ、女性誘拐、強制結婚がなされました。彼らが政権についたら、それがまた起こるのです。

カルハトカール: RAWAが国際社会に訴えたいことは何ですか。

ファリャル: RAWAは80年代はじめに、パキスタン、サウディアラビア、イラン、米国、フランスが原理主義者に対する財政的、軍事的援助を始めたとき、原理主義者はゆくゆく非常に危険な存在になる、それもアフガニンスタン人民やあの地域にとってばかりでなく、世界全体にとって危険になるのだと警告しました。RAWAは9月11日のような事件を予見していたのです。
 RAWAは、長年にわたって、アフガン国内の諸派に武装を解除させ、そして、タリバンと北部同盟に武器を提供したり財政的支援を与えたりする諸国を軍事的な面で(militalily)制裁するために、国連の介入を要求してきました。

カルハトカール: サウディアラビアとかアラブ首長国連邦とか・・・

ファリャル: サウディアラビア、アラブ首長国連邦、パキスタン、イラン、ロシア、インドです。こうした国々が北部同盟を支援しているのです。もしアフガニスタンの問題にほんとうの解決を求めるのなら、最初になすべきことは、彼らを支援する国々に対する制裁、やはり軍事的な面での制裁です。

カルハトカール: 武器の売却をやめさせることですか。

ファリャル: そうです。武器の売却、財政的その他の支援です。それから、アフガニスタン国内の諸勢力を武装解除させなければなりません。彼らが武装しているかぎり、そして外国から援助を得ているかぎり、戦闘をやめることはないからです。

カルハトカール: 米国による空爆についてはRAWAはどういう立場をとっていますか。

ファリャル: アフガニスタンに対する世界の注目がすべて9月11日以降のことなのは残念なことです。それ以前には、アフガニスタンは、世界最大の忘れられた悲劇でした。私たちは、テロリズムに対する戦いは歓迎します。じつを言えば、9月11日のような出来事を防ぐためには、この戦いは何年も前に始められるべきだったのです。でも、テロとの戦いは爆撃によって、あるいは米国によって行われうるものではありません。それは、どんな国も原理主義者の運動や原理主義者の体制に対する武器売却や財政的支援をやめるようにとのキャンペーンであるべきです。

カルハトカール: 以前は食糧を提供してくれる機関に頼っていた700万人のアフガニスタン人が、今日は餓死寸前の状況にあります。UNICEFの推定では、今年の冬には10万人の子どもが、私たちの援助が届かないために餓死するだろうといいます。この差し迫った悲惨なな事態に対して国際社会はどう対応すべきでしょう。

ファリャル: 即座に人道的援助を行うことが、第一になすべきことです。アフガニスタンでは、空爆のために、多くの人道的援助機関が国内に入れずにいます。パキスタン、イラン、あるいはその他の隣接する諸国では、9月11日以降、何千人もの避難民が逃げ込んでいて、そういう人達には人道的援助機関が援助を行うのも容易です。パキスタンには、9月11日以降、10万人の難民が逃げ込みました。あるいは、昨年、旱魃と寒さと戦争のために、パキスタンには10万人を越す難民が来ました。ちなみに餓死寸前の人が700万人というのは、何カ月か前に起こったことです。

カルハトカール: 1979年アフガニスタンに攻め込んだソ連が持ち出した口実の一つは、アフガン女性を原理主義から解放するというものでした。今日、米国政府とアフガニスタンの空爆支持者たちは、原理主義者によるアフガン女性の抑圧を口実にして空爆を正当化しているようです。女性問題をこのように扱うことについてご意見を伺えますか。

ファリャル: ソ連による侵攻と傀儡政権の時期には、アフガニスタンの女性の地位が改善されたと言われたものでした。しかし、それは本当ではありません。アフガニスタン女性の状況が改善されはじめたのは20世紀の初期です。元国王の時代、あるいは初代大統領の時代、あるいは元国王の時代より前でも、女性はまさしく基本的不可欠な教育を受ける権利と就労権を持っていました。政府の役人にも女性はいました。一部の場所では、政府は、子ども、それも特に女の子を学校に行かせることを強制したくらいです。
 ソ連は、アフガニスタンの女性の地位が改善されたのはソ連侵攻と傀儡政権の時代だと言っていますが、ソ連がアフガニスタン女性に与えようとしたいくつかの権利は、西洋社会では問題なく認められるものであっても、私たちの社会では受け入れられないようなものでした。そんな変革を一朝一夕でできるわけがないのです。たとえば、ソ連は、いわゆる恋人をもつ権利だとか、ナイトクラブで踊る権利を与えようとしましたが、それはアフガニスタン社会では認めるわけにいかないものなのです。私たちは、教育のような、ごく基本的なことから始める必要があるのです。ソ連が女性の本当の潜在的可能性を実現させたということは、決してありません。そこで9月11日以後米国が「よし、これはアフガニスタンの女性にとって適切な状況ではないから、変革する必要がある。我々が、この国に爆弾を落として、この体制をお払い箱にしてやるべきだ」と考えたわけです。

カルハトカール: RAWAは政府からは何の支援も受けていませんが、もしかりに受けられるとしたら、どんな支援なら受けますか。

ファリャル: 私たちはいつでも、アフガニスタンのような国、つまり男性が支配する原理主義の国では、独立の女性の組織の存在は革命的なことなのだということを明らかに述べてきました。RAWAが暴力的な組織だということではありませんし、武装闘争賛成派だというのでもありません。ところが、一部の国の政府やNGOは、RAWAは武装闘争主義の団体だとか凶暴だと思っているように思います。私たちが財政的支援を受けようとしたときには、これこれの政策を変更すれば、なんらか財政的支援を提供することは容易になるのだと、あからさまに言われたものです。パキスタンの英国大使館に話をもちかけたことがありますが、あなたの団体の名称のこの言葉を変えれば何か支援をすることができるだろうと言われました。私は、RAWAは政府から支援を受けてもかまわないと思いますが、私たちの政策を歪めないかぎりでのことです。

カルハトカール: もし、将来アフガニスタンにタリバンの穏健な分子と北部同盟からなる連合政府ができるとして、米国がRAWAをその政府で存続していける一部として支援しようと決定したとしたら、RAWAは、それを受け入れますか。

ファリャル: タリバンの穏健分子という言葉で何を言いたいのかをはっきりさせることが重要だと思います。その穏健なタリバンが例えば外相だとすれば、彼は穏健ではないでしょう。サイラ・シャーのドキュメンタリー『ヴェールの下に』で彼が述べているように、彼は、手足の切断や死刑をするためのスタジアムをタリバンがまた建設するのを、国際社会が援助すべきだと信じているからです。でも、タリバンと共に、あるいは北部同盟と共に闘っている人が各々すべて、彼ら全体と同じように罪があると主張することもできません。
 タリバンの中で70%は共に闘うことを強制されている人達です。単にお金のためです。イデオロギー的には、彼らはタリバンに共鳴しているわけではありません。私たちが彼らのことを話すときには、必ず、犯罪者である指導者や司令官のことを言っているのです。指導者や司令官は国際法廷に送られるべきです。アフガニスタンの将来の政府に彼らを入れてはなりません。私は、こういう犯罪者が加えられるかぎり、RAWAが連立政権に参画することはないと思います。

カルハトカール: 米国がRAWAを後押したら、それは、アフガニスタンでのRAWAの信頼性に、どういう影響をもつでしょうか。

ファリャル: 米国が私たちを私たちの全政策を含めて支持するなら、つまり私たちの原理主義反対、民主主義・言論の自由・表現の自由・信教の自由・人権・女性の権利支持の政策を支持するのなら、また、私たちがつねに諸外国がアフガニスタン国内の原理主義グループのどれを支持してきたかを明らかにしてきたことも含めて、支持するというなら、かまわないと思いますが、そういうことは可能ではないだろうと思います。

カルハトカール: アフガンのほかの同様な団体がRAWAを誹謗するのはなぜですか。

ファリャル: ほかの団体が私たちにどんなレッテルを貼っているかはあまり気にしていません。私たちが急進的すぎると思うむき、たとえばシマ・ワリはワシントン・ポストの記事で書いたように「RAWAはアフガニスタン女性の普通の価値観を代表しない」など言いっていますが、私にはアフガン女性の普通の価値観とはどういうものなのかわかりません。私たちは自由を支持するから、民主主義を支持するから、人権を支持するから、アフガン女性の普通の価値観を代表していない、なぜならそれらはアフガンの普通の女性のものとは見なされないから、というわけです。アフガンの普通の女性とは、ブルカを被った女性、家の中にいる女性、人間の半分を成す女性です。だからRAWAは極左だと言うのですか? ならば、私たちは、私たちの国と人々を守るために極左になりましょう。

  カルハトカール: RAWAに関する多数の論評のひとつは、RAWAは北部同盟を批判しているから、政府に少数民族が入ることを望んでいないのだというものです。あるいは、タリバンを批判しているから、パシュトゥン人が政府に入ることを望んでいないのだとも言います。この国の人口の40%がパシュトゥン人です。RAWAの民族構成はどのようになっていますか。

ファリャル: ハザラ人もいれば、パシュトゥン人もいますし、タジク人、ウズベク人、パシャイ人、ヌーリスタン人もいます。また、ごく辺境の出身の人たちもいます。

カルハトカール: RAWAは、将来なんらかの安定した平和なアフガニスタンが実現するときの経済開発のモデルについて議論しているのでしょうか。もしそうなら、どんなモデルを考えていますか。

ファリャル: RAWAが将来の経済的インフラストラクチャーを論じたことはないと思います。たぶん、それは、RAWAが論じるべき問題のひとつです。もちろん、RAWAが所属することになる経済構造は必ず、アフガンの人々が平等に暮らすことを保証するものになると思います。私たちが戦争の間ばかりでなく、それ以前から見てきた、飢餓や教育の欠乏や基本的な衛生サービスの欠乏などは、二度とあってはなりません。

カルハトカール: 最近読んだのですが、世銀はすでにアフガニスタン再建を援助すると約束しています。アフガニスタンの人々は外国企業の存在にどのように反応すると思いますか。

ファリャル: 私たちは、まちがいなく国際企業とその援助を必要としています。でも、支援は、アフガガニスタンを傀儡政権とするものであってはなりません。

カルハトカール: 米国が80年代に、グルブディン・ヘクマティアルなど、今では北部同盟に加わっているような人々に何十億ドルもの資金を費やした事実は、多くの人によって論じられています。数十億ドルもの援助が、武器と軍事訓練のためにアフガニスタンに流れ込みました。私たちは北部同盟が米国、ロシア、中国、インドの援助を受けているのを見ています。国際社会からの、ひも付きでない何らかの補償について、あなた、あるいはRAWA全体として、どうお思いですか。

ファリャル: それらの国が、親切にも、なにがしかのお金を、この国の再建だけのために提供してくれるというのなら、もちろん誰もそれをいやだとは言いません。でも、それが、それらの国がアフガニスタンに利権をもっているからというだけの理由で、原理主義者の懐に入ったり、アフガニスタンの国と民衆をいっそうひどい悲惨に陥れる分子の手に渡ったりするというのなら、また別の問題です。

カルハトカール: もしRAWAが今後のアフガン政府の一翼を担うのだとして、あなたなりRAWAのほかのメンバーのうちの誰かがその政府の代表に加えられるのだとしたら、あなたたちの安全はどのように脅かされるでしょうか。

ファリャル: 民主的な政府、あるいは比較的民主的な政府だけが、私たちが進んで参加する政府だと思います。原理主義者や原理主義体制によって指導されている政府には私たちは参加できません。そのときは状況が違いますから、RAWAの安全の問題も別です。たぶん、そのときまでに私たちは、今のように完全に秘密の組織である必要はなくなっているでしょうから、私たちの仕事も公然と行うことができることでしょう。もし、そういう社会が達成できれば、女性はそれに参加することができます。そして、原理主義者がいなくなり、今あるような危険がなくなれば、私たちは秘密でいる必要はなくなるのです。

カルハトカール: RAWAは世界の他の女性の運動と関わりがあるのですか。

ファリャル: 1997年以来、私たちは、何百もの女性の団体と連絡を取り合っています。しかし、そういう連絡はほとんど電子メールか私たちのウェブサイトを通じて行われます。ところが、インターネットや電子メールを利用できない人が多いのです。この国では、私たちはいろんな仕方で支援を受けており、これまでに、たぶん何千人ものアフガニスタン人の生命を救い、何千人もの子どもに教育を与えるうえでの、その影響を見てきています。

カルハトカール: あなたは、大人になって以後大半の時期をRAWAのメンバーとして過ごしてこられました。あなたや、仲間のRAWAメンバーたちが活動を続けてくることができたのは、なぜでしょうか。

ファリャル: それは状況に大いに関わりがあります。あなたが、人々が何もかも失ってしまう国に生きていたら、人々が道徳も物質的価値も失い、女性が人間の身に起こると想像しうるかぎり最も恐るべき経験をしているのだとしたら、あなたが少しでも良心を持っているかぎり、じっとしていることはできないでしょう。あなたは何かをする必要があるのです。これが、こうも多くの女性、こうも多くの教育を受けた女性が、アフガニスタンで自殺する主な理由だと思います。その人達は、RAWAのような団体と連絡をとることができないからです。その人達は、自分を、まったくなんの助けも希望もなく、なんの選択の自由もないと思うからです。でも、あなたが何かをすれば、それが人々の命を救うのだということがわかりますから、あなたはエネルギーを得て、その活動を続けていけるのです。また、私たちは、RAWAの他のメンバーからも力を与えられています。私たちは、皆、RAWAの創立者であるミーナによって士気を奮い起こされています。また、国際的な支援を得ていることも、非常に心強いことです。世界中の、特に女性からの支援、例えば、社会に認識を広め、カンパを集めるために街頭を歩いてくれたり、RAWAに送る金を募るためにハンストを続けてくれる人たち、また、アフガン女性ミッション(Afghan Women's Mission)のようにこの国で私たちを献身的に支援してくれる人達からの支援です。

カルハトカール: アフガニスタンについてのRAWAの考えを信頼する人達は、RAWAの助けになるために、どんなことができるのでしょうか。

ファリャル: 財政的支援はいつも一番有意義で実用的な助けです。また、特に今の時期には、政治的参加がとても重要です。政府の人達に手紙を書くことで、人々は政府や米国にとって無視しがたい圧力をかけることができます。主な問題は空爆でなければなりません。テロとの本当の戦いは、テロリズムやテロリストや原理主義者をかくまう国に対して財政的にも軍事的にも一切の援助をやめることであるべきです。アフガニスタンの諸団体を武装解除させることによって、アフガニスタンの武装勢力を支援する諸外国の政府に圧力をかけることによって、政府に北部同盟の犯罪と残虐行為を認識させて、彼らを政府に入れないよう圧力をかけることによってです。また女性は未来のアフガン政府の一翼を担うべきです。これらが、人々が自国の政府に語ることのできる一番大切なことです。

[このインタビューは、ロサンジェルス・インディペンデント・メディア・センターのために、ラジオIMC-LA とコミュニティ・ヴォイス・プロジェクトにより録音された。ソナリ・カルハトカルは、アフガン女性ミッション(www.Afghanwomensmission.org)の副会長。]

(翻訳 萩谷 良)

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