ジョン・ウォーカーは米国のA少年??

   アルカイダのメンバーとして、マザリシャリフで米国軍の捕虜となった、米国人青年、ジョン・ウォーカー氏については、日本ではごく一面的な情報しか入っていないようです。
 そもそも、ニューヨークタイムズやUSAトゥデイなどの米国の代表的な新聞の記事が、完全に政府の御用新聞みたいに、大事な事実をごまかした報道をしているのです。
 なぜか、ワシントンポスト、それにロサンジェルス・タイムズはそれより詳しく、信頼できそうな内容でした。  両紙の情報を合わせると、以下のようになります(やや未整理なまま列挙しますが)。

 ジョン・ウォーカー・リンド(法廷向けの書類では母の姓ウォーカーを使っている。リンドは父の姓なので、時により、どちらを使うか定まらず、マスコミもリンド氏とかく新聞とウォーカー氏とかく新聞がある)というあの青年は、アフガンで捕まったあと、アラビア海上の米国戦艦バターン号に拘留されて、尋問を受け、そこで、宣誓供述を行なっていて、今回の裁判ではそれが重要証拠となっています。
 

 同宣誓供述書によれば、ジョン・ウォーカー氏は、昨年の5月に、それまでイスラム教を学ぶために通っていたパキスタンの学校を退学してパキスタンのテロリスト・グループ「ハラカット・ウル・ムジャヒディン」に参加。カシミールでの先頭に加わる計画だったが、24日間の銃の訓練のあと、タリバンの募集に応募した。
 ・同宣誓供述書によれば、9/11の約3カ月前に、ウサマ・ビン・ラディンと少人数で面会したことがあり、米国でなんらかの自殺攻撃事件を起こすことを告げられ、米国民を相手にするより北部同盟と戦うことを選んだ。

 ・FBIによれば、供述のとき、ジョン・ウォーカーは被疑者に不利や証言を拒否する権利などを規定したミランダルールの説明を受けたうえで、弁護士は要らないと言ったという。
 ・FBIは、自白は「任意」のもので、ウォーカー君が自発的に語ったのだといっている。しかし、両親の立てている弁護人や、米国の弁護士団体は、自白の任意性はきわめて疑 わしいと主張している。バターン号で、ウォーカー君は、自分を敵と見る軍の人間に取り囲まれていたのであり、そこで弁護士は要らないなどと自分から言うとは、まず考えられないからだ。FBIでは、ウォーカー君に、「ミランダ規則」を説明してあると言っているが、それはあやしい。弁護士は、拷問か薬剤使用を疑っている。
 ・両親は弁護人を立てて、息子に面会したいと言っているのに、当局は、弁護士と の接見さえ拒んでいる。
 ・両親は公式の声明の中で、息子が45日間も軍によって拘留されたまま、家族と いっさい連絡がとれず、両親からの手紙も届いているかどうか不明であることについ ての不満を表明し、 、「私たちはなるべく早く息子に会い、彼に必要な愛情と支援を与えたい」と述べた あとで、「私達は、推定無罪が認められ、犯罪事実が法廷ですべて提示されるまでは判 決が差し控えられる国の国民であることに感謝し、この件でも公正な解決がなされる よう祈っている」と書いている。(この後半は、大変な皮肉かもしれない。にもかか わらず、NYTやUSA Todayなどは、前半を省いて、後半だけを流している)。

 ・ウォーカー氏は、反逆罪でなく、テロ幇助罪に問われるという。反逆罪は最高刑が死刑、テロ幇助罪は最高でも終身刑だ。しかし、これで死刑の可能性がなくなったかといえば、そうでは なく、マザリシャリフでのタリバン捕虜の反乱のときに殺されたCIAのメンバー、ジ ョニー・マイク・スパンの殺害に、ウォーカー氏が少しでも協力したということにな れば、反逆罪による死刑がありうる。

 ・宣誓供述書によれば、ウォーカー氏は、11月25日のスパン殺害には関わりをもっていないと主張。その 事 件のときには、スパンに中庭にいろと言われて中庭に降りていたと語っている。

 ・ウォーカー氏は、父親のリンド氏はカトリック、母親のウォーカーさんは仏教徒という 家庭に生まれ、自分は16歳のときにイスラムに改宗すること を決心し(マルコムXの本を読んだのきっかけだったと別のある記事にあったと記憶するが、不確か)、両親もそれを認めたので、スレイマン・アル・ファリスと改名し(ある記事で「コード」などと言っているが、そうではなく、ムスリムとしての正式の名前)、イェー メンにコーランの勉強をしに行ったが、2度目にイェーメンに行ったときから米国に 帰らなくなった。(この改宗と留学を両親の甘やかしと非難する声が米国の一部にはあるようですが、不当なことです)。

 ・ジョンは、マザリシャリフでのスパンの尋問にはいっさい答えなかったとのことだが、FBIには「 自発的に」宣誓供述を行なったという。神戸事件をはじめ、何件もの冤罪事件について情報を得ている者 としては、こんなことはとうてい信じられません。

 ・なお、裁判の行なわれているバージニア連邦地裁は、ムサウィ裁判も行なわれているところですが、陪審員は退役軍人などが多く、拙速の審理で、被告人に不利な判決を下す恐れが十分にあります。
[その後、両親のつけた弁護人は、彼をジョン・リンドで通していることがわかりました]

2002.1.21

アメリカ人の捕虜 ジョン・ウォーカー、裁判のため帰国

ニューヨークタイムズ 1/23
キャスリーン・シーライ AP

 政府筋からの情報によれば、アフガニスタンで祖国に背く戦闘に加わったとされるジョン・ウォーカー容疑者(20歳・カリフォルニア出身)が23日に帰国する。バージニア州アレキサンドリア連邦地区法廷での裁判まで、ワシントン特別区の拘置所に置かれる予定。アレキサンドリアは、陪審員が保守的なことで知られる。彼の罪は、共謀して米国人(複数)を殺したこと[殺人計画共謀罪]、およびテロリスト集団を支持したことで、有罪なら最高刑は終身刑である。
 ウォーカー容疑者は、12月1日に捕虜となって以来、米国によって、両親の以来した弁護士との接触も拒まれたまま、拘留されてきた。当局によれば、本人が弁護士をつける権利を放棄したという。当局によれば、ウォーカー容疑者は、きょう、アラビア海の海軍軍艦から飛行機で、アフガニスタン、カンダハルにある米軍基地に運ばれたのち、貨物機でダラス国際空港に移されてきた。
 ラムズフェルド国防長官は、記者会見で、ウォーカー容疑者は、どんな囚人とも同じように、手錠をかけられていると述べた。「運ばれる時は、拘束されるものだ。囚人が世界を回るときも同じことだ。なにも新しいことではない。輸送中は、ひとつの場所からべつの場所に移るとき良くないことが起こるからだ」と長官は語った。
 欧州諸国政府からは、ウォーカー容疑者が、キューバのグァンタナモ米海軍根拠地に移された他の国の捕虜よりましな扱いを受けているのではないかとの疑問の声があげられてきた。英国議会では、21日に、一部の議員から、ウォーカー容疑者はいい待遇を受けているだろうとの発言があり、この問題が議論された。
 この問題を質問されたラムズフェルド長官は明らかに不快な様子で「5000マイルも離れているイギリス議会がそこまでお見通しとは大変な話だ。特別の扱いをしているとか、したとかいう話は聞いていない。ウォーカー容疑者は負傷しているので手当てを受けているが」と答えた。
 ウォーカー容疑者はグァンタナモ湾の囚人のように8フィート四方の檻に入っているのではないかという質問に、長官は怒りを露にした「これははっきり言っておくが、グァンタナモ湾はアフガニスタンとは違う。8フィート四方の独房に入って、美しい、日の光がいっぱいのグァンタナモ湾にいるというのは、不人情な扱いではない」
 [BBCの情報*では、「檻」の大きさは、6フィート×8フィート(1.6m×2.4m)]
http://www.nytimes.com/2002/01/23/national/23WALK.html
*http://news.bbc.co.uk/hi/english/world/americas/newsid_1771000/1771687.stm
2002.1.23

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