声をあげ始めたイラク戦争兵士の家族たち/
9・11犠牲者の家族・友人・恋人たち


 米国では、イラク戦争のために自分の子どもを奪われるの はごめんだ、イラクの人たちも殺したくない、と、兵士の親たちの会、Military Families Speaks Out (「兵士家族は語る」or「もう黙っていない兵士家族の会」) が結成されています。

 昨年の秋にたった2家族で始めたのだそうで、Yahooでメーリングリストを作り、同 じ思いの家族たちの参加を呼びかけています。

 サイトのURLは、
http://www.mfso.org/pages/1/index.htm

   自分の子どももイラクの罪のない人たちも、無意味なブッシュの野望や企業の 利権のために死なせてたまるか、という思いには、ほんとうに共感を覚えます。

 武力で平和は守れない、ということももちろん考えるのですが、その一方で、平和 のために武力を行使することもやむを得ない、と考える人が、みな血に飢えた人間で はないということを忘れずにいたいとも思うのです。むしろ、同じ国の人たちを守る ことに意義を感じている、善意の人もいるわけですから、そういう人たちを、無意味 な身勝手な戦争のために使うなどということは、言語道断だと、あらためて思います 。

 以下は、MFSOの親の一人の発言です。訳はオーストラリアメルボルン在住の千早さ んです。

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悪意の道を進まされる子供についての手紙

兄弟姉妹、友人、知人の皆様へ

ご存知の方もご存知でない方もたくさんいらっしゃいますが、私の息子のジョーは海 兵隊、アラブ言語の無線偵察奇襲部隊員です。先週末、彼が中東へ向けて出発する 前、最後に息子に会ったときの私達の写真を添付しています。

ナンシーと私はラッキーなことに、ノース・キャロライナ行きの飛行機に間に合い、 週末をジョーと海辺で過ごすことができました。私達は世界が私達の周りで砕け落ち て来ることなどないかのように、ボディー・サーフィンをしたり自転車に乗ったり、 のんびり過ごしました。

ジョーは出発を控え、自分はイラクに行かされることを確信していました。

私は誰の息子にも娘にも、石油やブッシュの政治的利得の為に死んでほしくありませ ん。ジョージ・ブッシュのエゴや彼の財政上の後援者が、理に叶った多数国参加型の アプローチをイラクに対して取ることを許さないからと言って、ジョーが傷ついたり 誰かを傷つけるようなことはご免です。イラクの無辜の女性、男性や子供たちが死ぬ のも嫌です。

先日ある店先で、店員が二人の客とイラク攻撃の可能性について話しているのが耳に 入りました。店員は単独攻撃に反対していて政府の敷いた布陣に疑問を呈していまし た。客は二人とも「今すぐ攻撃すべきだ」と言っていました。私は進み出てジョーの 写真を見せ、「これは私の息子です。彼はあなた方の戦争で死ぬかもしれません。ど うしてそんなことが起こらなきゃいけないのか、教えて下さい」と言いたかった。で もしなかった。そしてそれをあとで後悔しました。ひとつには、泣かずに語ることが 出来ないからです。今こうしてこれを書いている間も泣いているくらいだし。

だから皆さんに、ジョーを知っている人にもそうでない人にも、彼の写真を見て戴き たいのです。或いは他の、危険に曝されようとしている人達−息子や娘や甥や姪や友 人、知人達の写真を見てほしいのです。

あなたが既に戦争に異議を唱えていたならば、ナンシーと私は感謝致します。もし反 対しようかと考えていたがまだ行動していなかったなら、是非とも動いて戴きたい。

そしてもしあなたが、戦いを回避する為のあらゆる可能性を試すことなく、より確か な情報を得ることもなく、全世界に本当に脅威があるのだと信じさせることも出来ぬ まま攻撃を始めるべきだと思っているならば、ジョーの顔を見て、もう一度よく考え て戴きたい。色々な疑問を今一度問うてみてほしい。

これは彼等が言うような難解な戦争などではない。
私達の子供たちは死ぬだろうし、他にも多くが命を失うだろう。

ベトナム戦争以前には「我々が世界を救わなければいけない!」と言われた。そして 多く がそれを鵜呑みにしたばかりに、何万人ものアメリカ人とそれを大きく上回るベトナ ム人が死んだのです。他の何千人もの人々は戦争中に経験した傷から完全に立ち直っ てはいない。

どうか考えて下さい。
どうか行動を起こして下さい。

連帯を!

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一方、9月11日事件で家族や恋人などをなくされた人たちの中から、戦争には反対だ という声をあげる人たちが「ピースフル・トゥモーローズ」というグループを結成し たことも、すでに知られている通りです。ピースフル・トゥモーローズが、このほど イラクに代表団を派遣し、その帰国時の記者会見の模様が送られてきたので訳しまし た。

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各国指導者よ、戦争なき勝利の道を探れ
9・11犠牲者遺族イラク訪問から帰国

2003年1月15日

ニューヨーク
9・11事件犠牲者家族の団体が、バグダッドとバスラの学校や大学や病院を訪問し、 民衆どうしの交流を図る6日間の旅を終えて帰国。イラクに対し軍事力行使以外の手 段を見いだすため「いくらかの想像力」を持ってほしいという要求を、世界各国の指 導者につきつけた。4人からなる代表団は、戦争とテロリズムに代わる実りある非暴 力的な道を探ることを主張する市民運動団体「ピースフル・トゥモーローズ」のメン バーだ。

「この旅で私は、自分の国が戦争の傷から回復し、子どもたちが幸福になってほしい と願う人たちに会いました」と、9・11事件のときWTCで伯父をなくしたキャット・テ ィンリーさんは語る。「世界の多くの国と同じように、イラクも、あまりに長いあい だ暴力を経験し、平和を待ち望んでいるのです」

「小学校の先生たちと話合い、先生たちが生徒たちに対してもっている希望を聞かせ てもらいました」と、姉妹のローラを失ったテリー・ロックフェラーさんも言葉を添 える「愛する人を失った悲しみと、子どもたちに対して持っている夢は、お互いに驚 くほど共通しているということがわかりました」

代表団は、アマリヤフの防空壕も訪れ、1991年2月14日の米国ミサイルによる防空壕 爆撃で亡くなった数百名の市民の親類縁者に会った。

「私たちがイラクの人々との間に作った個人どうしのつながりは、とても深い、意義 のあるものでした」と、9・11の旅客機の乗客だった姉妹のローリー・ネイラさんを 失ったクリスティーナ・オルセンさんは語る「病気や怪我の子どもたちや、愛する人 を失った家族の人たちと会ったことで、私たちが互いの苦しみの中で共有する人間的 なつながりが大切であるという認識が深まりました」

兄弟のビル・ケリーがWTCで亡くなったコリーン・ケリーさんも「イラクの人々の中 に 一人一人の人の顔と物語を見いだすという私たちの希望がイラクで実現され始め たのです。世界各国の政府に、今の危機に代わる実行可能な平和的な手段、創造的で 、そしてたぶんこれまでにはなかった外交手段を、どんなものであれ探ってほしいと 要求しようという私たちの決意は、これでますます深まりました。」と語る。

ニューヨークの国連チャーチ・センターで行った記者会見で、代表団は、1月15日が 、マーティン・ルーサー・キング牧師の誕生日でもあることにふれた。牧師が1967年 に語った「平和な明日を彫りあげるには、戦争は粗末な鑿である」という言葉が、ピ ースフル・トゥモーローズという団体名の由来となっている。

「平和な明日をめざす9・11家族の会」は、2002年2月14日に発足し、今では、自分の 家族を9・11事件で失った人々 50人以上と、2000人の支援者が参加している。その趣 旨は、テロリズムに対する非暴力的で実りのある解決策を探ること、9・11事件犠牲 者遺族と、世界中の暴力によって家族や知人を失った人々との共有の経験を認識する ことにある。正義を求める平和的な方法を良心的に求めることにより、グループのメ ンバーは、戦争が生み出す暴力と報復のはてしない循環を打ち破ろうと努める。そう することで、自分たちにも子どもたちにも、いまより安全な世界が作り出されること を希望して。

詳しくはhttp://www.peacefultomorrows.org

ピースフル・トゥモローズ日本語版もあります。
http://no-yuji.cside.com/pt911/index.htm

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