【しんぶん赤旗2002年4月14日】 |
ベネズエラ チャベス大統領の辞任 南米の産油国でなにが 政変 -- クーデターの様相 ちらつく財界と米国の影
ベネズエラのチャベス大統領が十二日、労働組合、国民の批判を背景にした軍部の圧力で辞任に追い込まれました。代わって登場したのは、労働者の代表ではなく、経営者団体連合会の会長。今後の政治の不安定化も予想されています。世界有数の石油産出国でなにが起きているのか。
チャベス大統領の辞任後、国軍は直ちに民間人を暫定大統領に据える措置をとリました。今回の政変は軍事クーデターの様相をみせています。 中南米ではかつて軍事クーデターが頻発しました。しかし、正当に選出された政権を強権で転覆することは、許されないとの認識が広まりました。今回の事態はそうした流れに逆行するものです。 その背景には複雑な要素が絡み合っています。
チャベス前大統領の辞任の引き金となったのは大衆の大規模な抗議行動でした。しかし、そこに財界とアメリカの影も見え隠れしています。
貧困対策道半ば、
対米自主外交貫いたが・・・
ベネズエラでは一九六〇年代後半から中道政党・キリスト教社会党と社民政党・民主行動党が交代で政権を担う二大政党制が定着していました。しかし、八○年代には石油価格の下落や国際金融機関から押し付けられた構造調整政策(民営化や緊縮財政)によって貧困が増大するとともに、政治家の汚職事件が続々発覚し、国民の不満が増大しました。
腐敗一掃掲げ
国を破たんに導いた二大政党制の打倒と腐敗の一掃などを掲げてチャベス氏が登場したのが九八年。56%の得票率で当選したチャベス大統領は、新憲法制定に着手。憲法制定議会選挙、新憲法承認の国民投票でも圧倒的な支持を集めました。新憲法には、経済運営での国家の役割を強調し、貧困層を救済する経済社会変革の大枠が盛り込まれました。
失業率の低下
チャベス大統領は選挙で再選された直後の二OOO年八月の演説で、いよいよこれからが、貧困対策など本格的な経済社会改革に取り組む時期だと強調しました。主要輸出品である石油価格の高騰という好条件にも恵まれ、就任後一年半で経済成長率はプラスに転換、賃金は44%上昇、失業率は14%台から13%台に低下するなどの成果が上がっていました。また、貧困地区には病院建設などインフラ整備を進めました。
米の戦争批判
他方、チャベス政権は積極的な対米自主外交を進めました。チャベス大統領は二OOO年にイランやイラクなど米国が敵視する国々を次々訪間。昨年の米州サミット(ケベック)で米国主導の米州自由貿易圏の発効期限などが合意された際には唯一「保留」の態度をとりました。また、昨年からのブッシュ米政権によるアフガニスタン戦争を厳しく批判する声明を発表し、親米政権の多い南米の中では珍しく対米批判姿勢を貫きました。 |