チャベス氏の潔白証明する
ベネスェラ・クーデタの真相明らかに (1)


 しんぶん赤旗が、このところ、ベネスェラ・クーデタの追跡調査をした記事「クーデタを乗り越えたベネズエラ」を連載しているので、ご紹介します。

真実を見つめる橋
「あのビルから狙撃者が」

【しんぶん赤旗1002年6月20日】

南米の石油大国ベネズエラで四月十一日、国軍の一部幹部らがクーデターを起ごしました。四十四年にわたるベネズエラの民政は大きな危機に直面しました。しかし、クーデターは二日足らずで失敗し、一時は拘束されたチャベス大統領が復権しました。米国の影が指摘される事件の背景と、その後の動きを現地で追いました。(カラカスで菅原啓 写真も)

首都カラカス市内を東西に走るウルダネタ大通リ。その日は早朝から、チャベス大統領を支持する数十万人の群集が集まっていました。ウルダネタ大通リが、南北に走るバラル大通リをまたぐ交差点にかかるジャグノ橋。大統領府からわずか一ブロックの距離です。事件はここで起きました。


突然の銃撃

橋から一ブロック南に、ひときわ目立つ高層建物があります。そのエデンホテルの屋上。金網越しに、照準器の付いたライフル銃を構えた狙撃者の姿がありました。

突然のことでした。ホテルと橋に挟まれたバラル大通リに、銃弾が降リ注ぎました。足に弾を受け、体を引きずって物陰に移動しようとする中年の男性。頭から血を流す青年の両わきを支え、橋に駆け上がる人。

騒然としたなかで、銃はさらに、橋上の群集に向けられました。驚き、逃げ惑う人々。身を守ろうと多くの人が腹ばいになリました。しかし、橋の欄干は鉄柵。そのすきをついて、銃弾が人々を襲いました。

事件を、クーデター派は、チャベス大統領が反政府デモを弾圧したのだと非難しました。テレビは、橋の上で反撃するチャベス支持派の姿だけを映しました。アナウンサーが「反政府デモヘの銃撃だ」と叫びます。混乱のなか、クーデター派は大統領を監禁し、政権に就いたのです。

ジャグノ橋でいったい何が起きたのか。それを記録したビデオがあります。この日、カラカス市内には、大統領退陣を要求する反政府デモもありました。しかし、ビデオが映し出した狙撃者が狙ったのは、ジャグノ橋付近にいたチヤベス支持派の市民でした。反政府派のデモは、先頭がバラル大通りのはるか南方に見えただけ【図参照】。エデンホテルからの銃弾は届かなかったのです。

怒り新たに

いま、ジャグノ橋の欄干にポスターが張られています。「虐殺責任者に厳罰を」との文字。橋には連日、大勢の市民が訪れ、目撃者の話に耳を傾け、悲しみと怒リを新たにしています。「あのビルから三人の狙撃兵がこの橋に向 けて撃ったんだ」---。 露天商のマルティンさん(仮名)がエデンホテルを指さし、高ぶリをおさえながら話します。

犠牲者を追悼する碑。その前で、会社員のミゲル・ペレスさん(二八)は「私は反政府でも親政府でもない。だが、真相を知リたい。ここにくれば本当の話が聞けると思った」といいます。

野党や財界は依然、政権側の対応を批判し続けています。それでも、チャベス大統領による弾圧命令が事件のきっかけだったという攻撃はなリをひそめました。「真実を伝えたい、知リたい」という市民の努力が、大統領への攻撃を許さなかったのです。「真実を見つめる橋」---ジャグノ橋は市民に多くのことを語リかけています。(つづく)

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