チャベス氏の潔白証明する
ベネスェラ・クーデタの真相明らかに (2)


緊迫の大統領府

発砲の命令はあったのか

【しんぶん赤旗2002年6月21日】
 アディナ・バスティダスさんは、クーデターの激動を肌で知る数少ない人物の一人です。バスティダスさんは、生産・貿易相を経て、この一月まで副大統領を務めたチャベス大統領の右腕。クーデター当日、四月十一日の様子を聞きました。


発砲事件直前

早朝から首都カラカス近郊で開かれた中小企業家らとの会合に出席していたバスティダスさんのもとに、大統領から緊急招集が届きました。大統領府に着いたのは、発砲事件の直前でした。その時の様子をこう回想します。

---国軍幹部らは、大統領に辞任を迫りました。大統領がこれを拒否すると、今度は大統領の身柄を引き渡せと要求してきました。

いくつかの選択肢が出ました。

第一は、大統領の影響力の強いマラカイ市に政府を移し、反撃を準備するという考えでした。しかし、マラカイとの通信が途絶えたため、この案はすぐに消えました。第二は、大統領を引き渡すが、辞任は拒否し続けるというもの。最後は、大統領府で徹底抗戦するという案でした。

議論のさなか、警官隊の発砲や市民の暴動で、カラカス市内が騒然としているとの情報が入りました。徹底抗戦すれば、大統領が死亡しないとも限らない。私は、大統領が生きていることが、この国に絶対必要だと判断しました。私たちは、徹底抗戦案をしりぞけ、大統領を一時引き渡そうと決めたのです。

大統領が連行される二十分前、私は大統領府を後にしました。

デモ隊への発砲など、大統領が命じるはずがあリません。反対派の暴力的なデモに対して警官隊が催涙ガス弾を使用する場合でも、「子どもはいないか」「危険はないか」と、治安当局にいつも確認していたぐらいですから…。

だれが命じた

その日、首都警察隊の一部が市民を狙って発砲したことを、多くの人々が目にしています。警察隊に発砲を命じたのはだれなのか。当日、大統領府の隣のビルに詰めていたという外務省職員のウイリアム・ファリニャスさんは語ります。

首都警察隊は、反チャベス派の市長の指揮下にあります。大統領はコントロールできなかった。首都警察隊による発砲が、犠牲と混乱を生み出して、クーデターを正当化するものだったことは明らかです。彼らの発砲をもって、大統領の責任を追及することはできない」

最初に発砲したとみられる三人の容疑者は、事件直後に逮捕されています。ところが、クーデターで政権についたカルモナ暫定大統領は、彼らの釈放を指示しました。彼らは翌日釈放され、現在も行方不明です。ファリニャスさんは「狙撃も首都警察隊の動きも、事前に計画された行動だったとしか考えられません。すべては、大統領を『殺人者』として非難することが狙いでした」と断言しました。

(カラカスで菅原啓 写真も) (つづく)


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