保護処分取消申立事件  質 問 書


【以下ではマルつき数字は文字化けするので使わず、○1 などとする】
私たちは、2002年5月23日、神戸家庭裁判所に対し、1997年10月17日、井垣康弘裁判官が、A君(以下A君もしくはA少年)に対してなした保護処分決定(医療少年院送致)を職権をもって取り消すことを求める申立をしました。ところが貴裁判官は、2002年6月10日、書記官を通じて、「立件をしない」旨の連絡をしてこられました。「理由はない」ということでした。

しかし私たちは、貴裁判官の「措置」には重大な疑問がありますので、下記の事項についてご回答いただけるよう要請いたします。

 2002年7月31日

申立人 後藤昌次郎
同   伊佐千尋
同   岡田義雄
同   酒井博
同   里上譲衛
同   品野実
同   壽岳章子
同   瀬川負太郎
同    妹尾活夫
同   戸田清
同   永見寿実
同   前田知克
同   水永誠二
同   生田暉雄
同   樺島正法
同   川村正敏
同   マイケル・フォックス
同   森下文雄
同   山口民雄
同   矢澤昇治
同   渡辺千古

神戸家庭裁判所 
 裁判官 五十嵐 章裕 殿


1 質問事項
貴裁判官は、A少年に対する保護処分決定(以下井垣決定といいます)の取消を求める本申立に対して、「立件せず」として、非行事実の存否を検討する審理を行うための職権を発動しないこととされたようですが、

(1) それは、

○1 本件申し立てが、不適法と判断されたためか(形式的理由)

○2 非行事実の認定について、井垣決定には誤りがなく、井垣決定を取り消す必要がないと判断されたからか(実体的理由)。すなわち、証拠上A少年の非行事実が十分認められるからなのか。

この場合、A少年の非行事実を認定した記録を精査され、その上で、本申立には、井垣決定を覆すにたる新規明白な証拠はないと判断されたのか。

○3 あるいはそのほかの理由によるものなのか。

そのいずれであるかを、理由を付してぜひとも明らかにしていただきたいと要望します。

(2) また、本件について、貴裁判官がなぜ担当されるようになったのか、その経緯、根拠を示していただけるよう要望します。

2 質問をする理由および事情【以下、要約】

(1)
ア 非行事実がないことを理由として保護処分取消を申し立てる、少年法27条の2にもとづく権利は、少年およびその法定代理人に認められる、というのが、最高裁昭和58年9月5日第3小法廷決定(「みどりちゃん事件」)以来の通説判例である(最高裁事務総局編『少年法実務要覧(下)』292ぺ一ジ以下)。
 また、上記以外の第三者でも、少年に非行事実がないことを知ったときには、家裁に保護処分取消申立ができると解すべきである。(→「申立書」第4)

イ 『この申立自体は、裁判所に職権の発動を促すに過ぎないものであることから、裁判所としては、帳簿上の扱いは、日記簿に登載すれば足り、後に裁判官の立件命令があった段階で事件簿に登載すると解されています(前掲書298ページ)。
   また、裁判所は、申立に関して、その当否について「決定」をすることも、その理由を付することも、さらには、その判断結果を申立人に通知することも必要としないと解されています。』
(『 』内は原文の通り。転載者には十分に理解できないので、要約しません。以下、原文通りの箇所は『 』)

ウ 裁判所は、非行事実の有無に少しでも疑問があれば、再審理をすべきである。

(2)
ア 五十嵐裁判官は、書記官を通じて、電話で、「立件しない」と「連絡」してきた。

イ これは納得できない。神戸事件では、警察発表をうのみにしたマスコミ報道により、A一家がすさまじい社会的バッシングを受けるなか、井垣裁判官もその風潮に押されて、判決を下したのである。
『14歳の少年でありながら、裁判官は、警察での留置場での拘留を認め、拘留の延長もし、これらに対する準抗告もすべて斥け続け、両親との面会も認めなかったのですから。
 このような社会的非難の大合唱の中、審判では、A君の「自白」が警察官の偽計を用いた取調べによってなされたものであるとし、自白調書の信用性、任意性が争点になっていたところ、A君は、「疲れた」といって、事実関係について争うことをやめ、付添人の弁護士らも事実について争わず、両親も口をつぐみ、A少年に対する井垣決定が出され、確定しました。A少年の犯行を否定するようなことは到底許されないような状況だったのです』
 これはA少年とその家族を社会的に抹殺することである。

ウ 略

エ 略

(3)
ア このような本件の特質にかんがみるならば、法律上、第三者による保護処分取消申立は権利でなく、単に裁判所の職権の発動を促すものでしかない(再審理は裁判官の自由裁量であり、義務ではない)としても、裁判官には、申立書、新規証拠を精査するべきである。

イ 6月23日提出の申立書は、井垣決定の矛盾を従来以上に明らかにし、内藤道興博士による鑑定も新証拠として添えた。

ウ 五十嵐裁判官は、この申立を真摯に検討していないのではないか。申立後わずか2週間で「連絡」があったことは、精査検討がなされてはいないことを示すと考えるほかない。連絡では、いっさい理由は述べられなかった。

 この疑念に答えるため、冒頭の質問に文書により立件しない理由を明らかにして回答されたい。
エ 立件しなかった理由が形式的なものならば、申立を再度検討されたい。

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